また問題のすり替えとごまかしか 朝日、再度の慰安婦特集記事
「また問題のすり替えとごまかしか 朝日、再度の慰安婦特集記事」(産経新聞:8月29日)
産経新聞の記事。
朝日新聞は28日付朝刊記事で、「河野談話、吉田証言に依拠せず」との見出しを取り、河野談話が作成されるに至ったことと、自社が執拗(しつよう)に吉田清治氏の「強制連行証言」を取り上げ、国内外に広めたこととは無関係だと印象付けようとしているようだ。その根拠の一つとして、朝日新聞は今回、こう指摘している。「(河野談話は)吉田氏が言うような『強制連行』ではなく、女性たちが自由意思を奪われた『強制性』を問題とした」
朝日新聞は、5日付の特集記事でも「(平成5年8月の談話発表時に)読売、毎日、産経の各紙は、河野談話は『強制連行』を認めたと報じたが、朝日新聞は『強制連行』を使わなかった」と主張した。だが、そこには朝日新聞が触れなかった点が隠されている。
河野談話の主役である河野洋平官房長官(当時)が、談話発表の記者会見で「強制連行があったという認識なのか」と問われ、こう答えている部分だ。
「そういう事実があったと。結構です」
この河野氏自身が強制連行を認めたという事実は、朝日新聞の2度にわたる慰安婦特集記事からは抜け落ちている。政府が今年6月20日に公表した河野談話の作成過程を検証した報告書でも、河野発言は1章を設けて特記されているにもかかわらずだ。
つまり、河野氏自身は強制連行があったことを前提に河野談話を主導したのだろう。その河野氏の認識に、朝日新聞のおびただしい慰安婦強制連行に関する報道が影響を及ぼさなかったとどうしていえよう。
朝日新聞は、平成6年1月25日付朝刊の創刊115周年記念特集記事では「政治動かした調査報道」と題し、こう書いていた。
「(慰安婦問題など)戦後補償問題に、朝日新聞の通信網は精力的に取り組み、その実像を発掘してきた」「(3年に)韓国から名乗り出た元慰安婦三人が個人補償を求めて東京地裁に提訴すると、その証言を詳しく紹介した。年明けには宮沢(喜一)首相(当時)が韓国を訪問して公式に謝罪し、国連人権委員会が取り上げるに至る」
河野談話につながる一連の政治の動きに、自社が大きく関与してきたことを誇らしげに宣言している。
また、朝日新聞は今回、「韓国、元慰安婦証言を重視」との見出しも取り、現役の韓国政府関係者と韓国元外交官の匿名証言をもとに、吉田証言と韓国での慰安婦問題の過熱はかかわりがないと言わんとしている。
だが、韓国政府が1992年(平成4年)7月に発表した「日帝下の軍隊慰安婦実態調査中間報告書」で、慰安婦動員の実態について「奴隷狩りのように連行」と書いた際の証拠資料とされたのは、吉田氏の著書であり吉田証言だった。
朝日新聞の28日付特集の主見出しは「慰安婦問題 核心は変わらず」とある。5日付記事と照らし合わせると、大事なのは女性の人権の問題だと言いたいのだろう。とはいえ、この論理も、自社が積み重ねた誤報や歪曲(わいきょく)報道を枝葉末節の問題へとすり替えたいのだと読み取れる。(阿比留瑠比)
批判されている朝日新聞の記事。
慰安婦問題、核心は変わらず 河野談話、吉田証言に依拠せず2014年8月28日05時00分
朝日新聞が今月5、6日に掲載した慰安婦問題の特集をきっかけに、さまざまな議論が起きている。慰安婦を強制連行したとする吉田清治氏の証言を報じた記事を取り消したことを受け、慰安婦問題で謝罪と反省を表明した河野洋平官房長官談話(河野談話)の根拠が揺らぐかのような指摘も出ている。談話作成にかかわった当時の関係者の証言を紹介するとともに、韓国社会での慰安婦問題の受け止め方を振り返り、改めてポイントを整理した。韓国・済州島で慰安婦にするために女性を暴力的に無理やり連れ出したとする吉田氏の証言を報じた記事について、朝日新聞は済州島での再取材や研究者への取材の結果、虚偽と判断し、取り消した。
これに対し、吉田氏の証言が事実でないならば、河野談話の「根幹」が崩れるとする主張が出ている。
自民党内でも同様の発言が出ており、高市早苗・政務調査会長は26日、戦後70年となる来年に、河野談話に代わる新しい官房長官談話を出すよう求める申し入れ文書を、菅義偉官房長官に提出した。
だが、日本政府は河野談話の作成過程で、吉田氏をヒアリングの対象としたものの、その証言内容を談話に反映しなかった。
談話作成にかかわった当時の政府関係者は朝日新聞の取材に対し、内閣外政審議室の職員が吉田氏に複数回にわたって接触したことを認めた上で「つじつまが合わない部分があったため、談話には採用しなかった」と明かした。
また、菅官房長官も27日午前の記者会見で「河野談話作成過程の検証で、強制連行は確認できなかったという認識にたって(韓国側と)交渉したことが明らかになっている」と述べ、当時、吉田氏の証言を考慮していなかったとの認識を示した。
談話作成の根拠になったのは、軍や朝鮮総督府、慰安所経営の関係者の証言のほか、日本の関係省庁や米公文書館などから集めた大量の資料だった。
河野談話発表の約4カ月前には、当時の谷野作太郎外政審議室長が参院予算委員会で「強制は単に物理的に強制を加えることのみならず、脅かし、畏怖(いふ)させ本人の自由な意思に反した場合も広く含む」と答弁した。
河野談話も「募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた」と結論づけ、吉田氏が言うような「強制連行」ではなく、女性たちが自由意思を奪われた「強制性」を問題とした。
安倍政権が今年6月に公表した、河野談話の作成過程の検証にも、吉田氏の証言をめぐる経緯が出てこないのは、談話が吉田証言を採用していなかったためとみられる。河野談話について、菅官房長官は27日、「見直すことはないと繰り返し言っている」と述べ、歴代政権と同じように継承していく姿勢を示した。
■韓国、元慰安婦証言を重視
韓国政府が慰安婦問題で最も重視しているのは、元慰安婦自身による多くの証言だ。朴槿恵(パククネ)・韓国大統領は「歴史の真実は生きている方々の証言だ。政治的な利害のためにこれを認めないなら、孤立を招くだけだ」などと繰り返し強調している。
韓国では、長く続いた軍事独裁政権が終わり、社会の民主化が進んだ1990年代にはいって、慰安婦問題に光があたり始めた。
その大きな転機となったのは、90年1月に尹貞玉(ユンジョンオク)・梨花女子大教授(当時)が日本や東南アジアを訪ね、韓国紙ハンギョレ新聞に連載した「挺身(ていしん)隊『怨念の足跡』取材記」だった。
同年6月、参院予算委員会で当時の社会党議員が、慰安婦問題を調査するよう政府に質問したのに対し、旧労働省の局長が「民間業者が軍とともに連れて歩いている状況のようで、実態を調査することはできかねる」と述べ、韓国で強い批判の声が上がった。この答弁に反発した金学順さんが翌91年8月、初めて実名で「慰安婦だった」と認めると、その後、次々に元慰安婦が名乗り出始めた。
これを受けて、韓国政府は92年2月から元慰安婦の申告を受け付け、聞き取り調査に着手した。
また、支援団体の「韓国挺身隊問題対策協議会」も93年2月、約40人の元慰安婦の中から信憑(しんぴょう)性が高いとみた19人の聞き取りを編んだ証言集を刊行した。女性たちは集められ方にかかわらず、戦場で軍隊のために自由を奪われて性行為を強いられ、暴力や爆撃におびえ、性病、不妊などの後遺症に苦しんだ経験を語った。
現役の韓国政府関係者によると、朝日新聞の特集記事が出た後、吉田氏は何と証言したのかとの問い合わせが韓国人記者から寄せられるなど、証言そのものは韓国では一般的に知られているとは言えないという。
80年代半ばから90年代前半にかけて、韓国外交当局で日韓関係を担当した元外交官は「韓国政府が慰安婦問題の強制性の最大の根拠としてきたのは元慰安婦の生の証言であり、それは今も変わっていない。吉田氏の証言が問題の本質ではありえない」と話す。
◆キーワード
<河野談話> 韓国の元慰安婦らが1991年、日本政府に補償を求めて提訴したことなどを受け、日本政府は調査を始めた。92年7月には当時の加藤紘一官房長官が調査結果をまとめて発表したが、内容が不十分だとの声が上がり、国内のみならず海外にも調査を拡大。93年8月に宮沢内閣の河野洋平官房長官が公表した。談話は、慰安所について「当時の軍当局の要請により設営された」とし、慰安所の設置や管理、慰安婦の移送に「旧日本軍が直接あるいは間接に関与した」と認めた。
<河野談話の作成過程検証> 今年2月の衆院予算委員会で、河野談話の作成に関わった石原信雄・元官房副長官が、韓国との事前のすりあわせを示唆したことを受け、政府の検討チームが談話の作成過程を検証した。安倍晋三首相は、結果が出る前に「(河野談話を)見直すことは考えていない」と発言。検討チームは6月20日、河野談話の作成や「アジア女性基金」の事業をめぐって、日韓両政府が頻繁にやりとりしていたことなどを盛り込んだ検証結果を発表した。
<吉田清治氏の証言> 戦時中に山口県労務報国会下関支部の動員部長だったと語る吉田清治氏(故人)は、日本の植民地だった朝鮮の済州島で、慰安婦にするため女性を暴力的に無理やり連れ出したと講演や著書で証言。朝日新聞は1982年以降、吉田氏の証言を記事やコラムで取り上げた。証言内容を疑う指摘が92年にあり、朝日新聞は97年に「真偽は確認できない」との記事を掲載し、以降は吉田氏の証言を取り上げていない。今年、改めて済州島などで裏付け取材をし、5日の特集「慰安婦問題を考える」で、「証言は虚偽だと判断し、記事を取り消します」とする記事を掲載した。
毎日新聞でさえも少し批判的。
朝日新聞:「核心変わらず」慰安婦問題記事取り消しで見解毎日新聞 2014年08月28日 22時14分(最終更新 08月28日 22時37分)
朝日新聞は28日付朝刊で、一連の従軍慰安婦報道のうち「強制連行した」と証言した吉田清治氏の記事を取り消したことに関し、「慰安婦問題 核心は変わらず」との記事を掲載した。
記事は、慰安婦問題で謝罪と反省を表明した1993年の河野洋平官房長官談話を策定した際、政府は「吉田氏をヒアリングの対象としたものの、その証言内容を談話に反映しなかった」と指摘。韓国政府についても「最も重視しているのは、元慰安婦自身による多くの証言だ」と強調した。
また、現役の韓国政府関係者の見方として、吉田氏の証言は「韓国では一般的に知られているとは言えない」と伝えた。
しかし、96年に国連人権委員会に提出された「クマラスワミ報告」は、強制連行の証拠として吉田氏の証言に言及し、日本政府に国家賠償を求めた。今回の記事はこうした事実には触れていない。
朝日新聞は今月5、6両日に掲載した特集記事で、韓国・済州島で「慰安婦にするため女性を暴力を使って無理やり連れ出した」と証言した吉田氏について、「証言は虚偽だと判断し、記事を取り消します」と訂正した。【古本陽荘】
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