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May 21, 2012

他人事でないEU危機

 「京都大学教授・佐伯啓思 他人事でないEU危機」(産経新聞:5月21日)

 ユーロの失敗は、通貨だけ統一して、国家を統一しなかったこと。ドイツがヨーロッパを統一した上で通貨を統一すればよかったのだが(まあ他国が許さないけど)。

 で、ヨーロッパを世界にあてはめると、アメリカのドルが世界中の国家で使われている訳で、同じような状況である。アメリカはドルという無価値な紙切れで世界中の財産を収奪してきたが、経済のグローバル化やアメリカ国力の衰退で、その正体がやっと見破られてきたようで嬉しい。

 今後、国際金融世界も混乱に見舞われると思う。何とかして金本位制に戻す事はできないものか。

 記事を引用する。

 1989年にベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツの統合が実現し、ヨーロッパの冷戦が終わったとき、日本ではほとんど「自由」と「民主主義」の勝利を歓迎するという論調一色だったと聞いていた。「聞いていた」というのは、当時、私はちょうどイギリスに滞在していたからだ。そのイギリスでも西側の勝利大歓迎に違いはないのであるが、いささか印象に残ったのは、サッチャー首相が、これを歓迎するとしながらも、同時にある強い懸念を表明していたことだった。それは、東西ドイツの統合によって、ヨーロッパの中心部に、またあの強力なドイツが誕生し、ヨーロッパの勢力バランスが崩れるのではないか、という懸念であった。

 こういう視点は日本ではなかなか実感しづらいものではないかと思う。しかし、当時、ヨーロッパの首脳たちがもっとも関心をもっていたことは強力なドイツの誕生であった。

 この懸念をもっとも強くもっていたのがフランスであり、結局、フランス・ドイツが中心になってEUが誕生する。ドイツをEUという大きな枠のなかに縛りこむというわけである。92年のマーストリヒト条約でEUへの動きがかくもスピーディーに加速するなどとは2年前には誰も予想していなかっただろう。それだけ、フランスをはじめとするヨーロッパ諸国のドイツに対する警戒感が強かったのである。

 市場統合は確かに戦後の石炭・鉄鋼共同体以来の宿願だったとしても、市場統合で経済を一体化すれば、政治的な敵対もなくなるであろうというのがヨーロッパ統合の趣旨である。要は、国家間の対立を未然に防ぎ、戦争を回避するのがヨーロッパ統合であった。

 ところがそのEUが昨年来たいへんな事態になっている。ギリシャ危機は一時は回避されたかに見えたが、結局、事態は深刻化している。議会は調整がつかず再選挙が行われるというが、どうころんでもうまい解決策は見当たらない。徹底した緊縮財政案を受け入れなければ公的機関からの援助は得られない。しかしそうすると経済状況は悪化し、賃金は低下し、民衆の不満は高まる。一方で財政拡張すればドイツ・フランスからの援助が打ち切られる可能性もあり、EUからの離脱という事態も想定される。

 しかもそれはただギリシャだけの話ではないところにEU問題の深刻さがあり、イタリア、スペイン、ポルトガルなどが同じ運命をたどらないともかぎらないのである。

 それだけではない。事態はEUの心臓部であるフランスまで及んでいるのであって、それが先頃の選挙にも示されたのだった。

 緊縮財政を掲げてドイツとともにEUの枠組みをあくまでまもろうというサルコジに対して、国内の雇用確保、景気回復のためには財政拡張も辞さないというオランドを国民は支持した。しかも、実際には、EU反対派で国内政策優先の極右と極左が大きく票を伸ばしたのであり、明らかにEU路線への反発が急速に拡大している。

 どうしてこういうことになったのだろうか。

                   ◇

 もちろん、ギリシャの特殊事情とか、ヘッジファンドの動向などがあるにせよ、基本的な構造は次のようなことだ。

 市場統合、特に金融市場の統合によって資本の国境をこえた動きが著しく、各国の国債も国境を越えてEU内で消化されている。ところが政治的な主権は各国にあり、それゆえ、各国政府は自国の経済の安定や雇用の確保に対して責任を負うことになる。ところが、金融市場が統合されているために、各国政府が採りうる手段は財政政策しかない。そこで財政拡張をすれば、今度は財政赤字が膨らむ。国債発行で財政資金を確保しようとすれば、EU全体に広がった国債市場が投機資本にねらわれる。かくて、緊縮財政へと戻ってくる。するとますます国内の不満が高まり、それは政治を不安定化してしまう。

 簡単にいえば、金融市場での資本の自由な移動と、財政健全化と、国内経済の景気回復という3つのことがらが並び立たないのだ。

 しかし、実はこれは最初からわかっていたことであった。EUは市場統合を行った。またEUには各国への財政上の縛りがある。とすれば、EU全体が成長しない限り、国内経済の景気の維持は難しいのである。政策手段が縛られてしまっている。つまり、経済統合をやりながら、政治的主権は各国にあり、各国は国民生活に責任をもつというEU方式に無理があった。

 成長力が落ちてくるとたちまちこの矛盾が噴き出してくるのである。確かに経済上の「自由化」は進んだ。ギリシャも旧東ヨーロッパも「自由経済」になった。しかし、そのために生じる問題が大衆の不満やいらだちを引き起こし、それが「民主政治」を著しく不安定にしてしまうのである。

 しかも考えてみれば、これは実はEUだけのことではない。世界全体で同じ構造ができつつある。今日の世界では、金融市場はグローバルに統合しており、しかし政治的主権は各国にあり、それぞれの政府は自国の雇用と景気に責任をもたなければならない。採りうる手段は財政政策だが、それをするとグローバルな投機資本に狙われる。こうしたジレンマのなかで大衆の不満が政治を著しく不安定化してしまうのだ。日本でも同様の事態へと移行しつつあるのであって、EU危機は決してユーラシア大陸の反対側の出来事ではない。むしろそれこそが今日の世界の縮図であることを知っておかねばならない。(さえき けいし)

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