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March 31, 2012

ちょっと待った! TPPより危険な日中韓投資協定

 「ちょっと待った! TPPより危険な日中韓投資協定」(産経新聞:1月11日)

 以前、米韓FTA批准について、「毒素」条項があると書いた。それが本記事にあるISDS(Investor-State Dispute Settlement, 投資家・国家の紛争解決)条項である。ざっとまとめてみる。

 ISDS条項は、本来は発展途上国や資源保有国の政府による強制収用(国有化や資産の接収などの強権的、恣意的な政策の発動)から、欧米企業が自己の権益を守るために生み出した対抗手段であったが、1994年のNAFTA(北米自由貿易協定)でカナダに適用された。そしてアメリカはISDS条項を拡大解釈した。米国企業や米国の投資家は、カナダでの投資計画がうまく進まなかったり、思うように利益をあげられなかったりした場合も「間接収用」と見なし、ビジネスが失敗したのは自分たちのせいではなく、カナダの法律やカナダ政府の政策のせいにしたのである。

 記事には、「ISDS条項は、国家の主権よりも資本の論理の優越を実現するための最凶の武器なのである」とある。確かにISDS条項は国家の主権を侵す。しかし、投資の結果を投資家以外に求めるのは「資本の論理」とは到底言えない。それだけは言及しておく。

 記事を引用する。

韓国国会の醜態

 日本のTPP交渉参加表明は、世界に様々な波及効果をもたらし続けている。とりわけ韓国と中国の反応が興味深い。(月刊正論2月号)

 韓国では、米韓FTAの批准難航に業を煮やした与党ハンナラ党が、11月24日に予定されていた本会議を急遽22日に繰り上げ開催し、批准案を強行採決した。抜き打ち採決だったため、100人以上の野党議員が間に合わず欠席扱いとなり、怒った野党議員が議長席に向かって催涙ガスを播き散らすという、近代国家にあるまじき醜態がテレビで中継され、全世界に放映されるという異常事態だった。筆者はTPP参加に慎重な立場だが、将来、我が国の国会でTPPが批准にかけられる暁には、韓国のごとき不様な失態の二の舞いが演じられないよう、切に望みたい。

 ところで韓国での米韓FTA批准を巡る与野党対立の最大の争点はISDS(Investor-State Dispute Settlement, 投資家・国家の紛争解決)条項であった。韓国のマスメディアではISDS条項をめぐる攻防が連日のように報道されていたが、日本のマスメディアはなぜかそれを日本国内に伝えなかった。しかし韓国国会での醜態は日本のテレビ各局も一斉にニュースで放映したため、日本国民の耳目を聳動した。

 明くる23日の日本の新聞各紙の報道(いずれもソウル発)は微妙にスタンスが分かれた。韓国国内の争点について比較的詳しく報じたのは産経、読売、朝日の3紙で、ISDS条項について、産経は「政府や地方自治体が訴訟対象となる可能性があり、敗訴すれば国民にツケが回る」、読売は「国の自主権の放棄だ」、朝日は「米企業の思惑で政府や自治体の政策が変更を迫られる」と野党側の反対理由をきちんと紹介している。

 また、全国紙5紙の中で朝日新聞だけがISDS条項がTPPでも検討対象となっていることに触れている。

 一方、日経は韓国国内の争点には簡単に触れただけで、「米韓FTAが動き出せば、日本企業と韓国企業の輸出環境の格差が広がる」「対米輸出で日本企業が不利にならないように、日本のTPP参加の必要性は高まったといえる」と強調し、かねてより同紙の社論であるTPP参加推進論に関連づけた記事となっている。

 特異な対応を見せたのは毎日新聞で、ソウル発の記事では、韓国与野党の争点は農業問題だったと説明し、ISDS条項問題には一言も触れていない。毎日新聞しか読んでいない人々は、催涙ガスを播いたのは農業関係の族議員だったのかと刷り込まれただろう。そして毎日新聞は同じ日の別の紙面に掲載した編集委員による署名記事で、ISDS条項を次のように「弁護」している。

 《TPPに関して、ラチェット条項(自由化の後退禁止)やISDS条項(投資企業が相手国政府を国際仲裁機関に訴えることができる規定)を「米国の横暴」「平成の不平等条約」などと騒ぎ立てる人がいたが、これらは日本が各国と経済連携協定(EPA)を結ぶにあたって、ねじ込んできたものだ》

 日本の既存の二国間経済連携協定にISDS条項が既に含まれているのは事実である。ただ毎日新聞の編集委員は、意図的かどうかは分からないが事の本質に触れていない。

 日本が過去に締結してきた経済連携協定の相手国は、スイスを除くすべてが発展途上国で、日本は基本的に投資する側(ホーム国)であった。投資される側(ホスト国)、つまりISDS条項によって提訴される側となる事態はほとんど想定せずに済んだのだ。現実に日本はこれまで一度もISDS条項で提訴されたことはない。

 しかしTPPの最大の相手国は米国である。相手が先進国、しかも世界最大の弁護士人口を抱える強面の訴訟大国である米国であり、日本が訴えられる立場になる蓋然性が確実に高まるとなれば、ISDS条項の持つ意味はおのずと一変するはずだ。

 そもそもISDS条項は、本来は発展途上国や資源保有国の政府による強制収用(国有化や資産の接収などの強権的、恣意的な政策の発動)から、欧米企業が自己の権益を守るために生み出した対抗手段であった。

 発展途上国では法体系や司法制度が未整備であることが多いため、ワシントンに所在する世界銀行傘下のICSID(国際投資紛争解決センター)など、先進国がコントロールできる場に救済を求める制度が必要だったのである。この意味においては、発展途上国に進出する機会の多い日本にとってもISDS条項が有用であることは間違いない。

 しかし、1994年のNAFTA(北米自由貿易協定)発効に際して、米国の提案によってISDS条項が初めて多国間協定に導入されて以来、状況は激変した。法体系も裁判制度も整備されている先進国であり、米国の友好国であるカナダが、米国企業によって次々とISDS条項によって国際仲裁所に提訴されるようになったのだ。カナダは米国の在加資産を国有化したり、接収したりしたわけではない。ならばなぜ提訴されたのか。

 米国企業や米国の投資家は、たとえ資産が国有化されるなどの直接的な被害を被っていなくても、投資計画がうまく進まなかったり、思うように利益をあげられなかったりした場合も「収用」と同等の「間接収用」と見なすという、途方もない拡大解釈を打ち出したのだ。ビジネスが失敗したのは自分たちのせいではなく、カナダの法律やカナダ政府の政策が悪いのだというわけだ。

 まず槍玉に挙げられたのはカナダの環境規制であった。カナダ政府は神経性有毒物質を含むガソリン添加物の輸入を禁止した。するとその製造元である米国のエチル社という企業がISDS条項を使ってカナダ政府を国際仲裁所に提訴し、3億5000万ドルもの法外な補償金を請求したのだ。カナダ国内の複雑な事情につけ込まれたこともあり、カナダ政府はエチル社との和解に応じて規制そのものを撤廃するはめになった。

 本来、国民の安全や環境の保護を目的としている国内規制が、利潤追求を妨害されたという外資の提訴をきっかけに撤廃へ追い込まれたわけである。立法府が制定した法律や行政府が施行している政策、つまり国家の主権行為を覆すだけの途方もない力を外資に与えるISDS条項の危険性が歴然となり、世界に衝撃を与えた。ISDS条項は、国家の主権よりも資本の論理の優越を実現するための最凶の武器なのである。

関岡英之氏

 昭和36(1961)年、東京生まれ。昭和59年、慶応大学法学部卒業後、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行。14年間勤務ののち退職。平成13年、早稲田大学大学院理工学研究科修士課程を修了。19年、拓殖大学日本文化研究所客員教授。著書に『拒否できない日本』(文春新書)、『なんじ自身のために泣け』(河出書房新社、第7回蓮如賞を受賞)、『帝国陸軍 見果てぬ「防共回廊」』(祥伝社)。近著にTPPを扱った『国家の存亡』(PHP新書)。(続きは月刊正論2月号でお読み下さい)

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