民主党代表選についての各紙社説
6月4日の各紙朝刊の民主党代表選についての社説が載った。見出しを列挙する。
産経新聞: 民主党代表選 拙速で政策論争に欠ける
読売新聞: 民主党代表選 8か月半の総括が不可欠だ
毎日新聞: 民主党代表選 刷新の覚悟が問われる
朝日新聞: 民主新代表へ―思い切った人事を望む
朝日新聞の社説によく見られる特徴だが、後になってから鳩山政権を散々にこき下ろしている。「『統治能力』が、鳩山政権には決定的に欠けていた」というのは致命的な批判だろう。他には「鳩山政権では小沢幹事長の影響力が大きく、『権力の二重構造』との批判や不満が渦巻いていた」、「鳩山政権は官僚を遠ざけすぎた」といった感じだ。なぜそれをタイムリーに社説で批判しないのか。後で書くのはジャンケンの後出しと同じで卑怯・無責任ではないか。それに批判を書かないことで、結果的に読者を騙してきたことになる。
各紙の社説から抜粋する。
産経新聞
「鳩山政権が国民の信を失い、8カ月余で行き詰まった原因は、政治とカネや米軍普天間飛行場の移設問題にとどまらない」
「子ども手当に代表される大衆迎合的な政策や、支持組織への露骨な利益誘導など民主党政治への批判は根強い。鳩山由紀夫首相の指導力欠如と小沢一郎氏への権力集中によって生まれた権力の二重構造や独裁的な党運営の弊害も指摘されてきた」
「民主党が主導する政権のあらゆる面が問われている。鳩山政権が続くほど国益が失われる、という痛烈な批判が少なくなかったことを重く受け止める必要がある」
「新内閣発足を急ぐのは、国会を会期延長なしで16日に閉会し、参院選の投開票を7月11日とする日程から逆算したものだろう。鳩山首相退陣による党へのダメージを最小限に抑え、参院選に突入するねらいといえる」
「国会審議の中断を極力避け、廃案の可能性が強まっている郵政法案を何とか成立させたいとの思惑も見え隠れする。新内閣が民営化に逆行する法案を最優先で成立させるなら、政策面でも国会運営でもこれまでと何ら変わらないことを強く印象づけるだろう」
「こうした中で、民主党のマニフェスト企画委員会は成長戦略の数値目標を入れた参院選公約の原案を決めた。移行期間での重要な政策決定は理解しがたい」
読売新聞
「鳩山政権の何を継承して、何を大きく変えねばならないのか。政権交代後8か月半の失政の真摯(しんし)な総括なしに、民主党の再生はあり得ない」
「党内の各グループの合従連衡だけで次期首相が決まるようでは、民主党が野党時代に批判してきた自民党の派閥政治による首相の『たらい回し』と変わらない」
「民主党では2004年以降、菅、岡田、前原、小沢、鳩山の各代表がスキャンダルなどでいずれも辞任した。小沢幹事長が代表を務めた3年余の期間を除けば、ほぼ毎年、党首が交代している」
「与党として同様のことが繰り返されれば政治不信は極まろう」
「小沢グループは党内の最大勢力で、代表選のカギを握る。だが、小沢氏が役職を失っても、隠然と影響力を維持するようでは、首相という『表紙』を取りかえただけとの批判を免れないだろう」
「きょう4日に選出される新代表はまず、どんな連立政権を組むかが問われる。国民新党との連立継続はともかく、参院選の選挙協力欲しさから、日米同盟を犠牲にし、再び社民党との連立を模索するような不見識は避けるべきだ」
毎日新聞
「党を刷新できるか、覚悟が問われる。鳩山由紀夫首相の退陣表明に伴う民主党の新代表選びは菅直人副総理兼財務相と中堅の樽床伸二衆院環境委員長が出馬表明した」
「首相と、小沢一郎氏の幹事長辞任を受け党の出直しが厳しく問われる局面だが、結局は小沢氏の存在が代表選の構図に大きく影響した。4日の代表選を、党の体質を改め、参院選に向けた政策の指針を示す場としなければならない。さもないと、信頼回復の足がかりはつかめまい」
「首相が退陣にあたり、小沢氏に連帯責任を求めた意味は重い。ところがフタを開ければ結局は小沢氏系の動向をめぐる駆け引きばかりにエネルギーが費やされた。結局、小沢氏系は自主投票となったが、小沢氏という要素を乗り切れない現実にやりきれなさすら感じてしまう」
「それだけに、党刷新をどう実現するかは重要だ。菅氏は小沢氏を役職に用いない考えを事実上示し、政治とカネの問題など党浄化に取り組む姿勢をアピールした。しかし仮に代表に選ばれた場合、真に『脱小沢』を断行したかが試されるのは幹事長人事である」
朝日新聞
「鳩山由紀夫首相の退陣表明を受け、民主党代表選がきょう行われ、新代表が直ちに国会で次の首相に指名される。あまりにも短期決戦である」
「歴史的な政権交代をうまく生かせなかった鳩山政権の経験をどう総括し、次の前進につなげるか。各候補が有権者とともに論議を深める時間がほとんどないのは、残念というしかない」
「新政権に何よりも求められるのは、日本の針路や私たちの暮らしにかかわる課題を的確に把握し、解決策を速やかに立案し、それを着実に実行していく力量である。この『統治能力』が、鳩山政権には決定的に欠けていた」
「鳩山政権では小沢幹事長の影響力が大きく、『権力の二重構造』との批判や不満が渦巻いていた。これでは政策決定の一元化はおぼつかない。首相や閣僚、党役員が常に『闇将軍』の顔色をうかがいながら政治を進めるような仕組みは一掃されなければならない」
「官僚の活用も大切だ。自民党政権時代、官僚は政策決定や調整といった政治の領分にまで手を出していた。それを見直すのは良いが、鳩山政権は官僚を遠ざけすぎた。政官の役割を整理しつつ、官僚の力を生かす必要がある」
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