競争と独占―産業組織論批判
越後和典「競争と独占―産業組織論批判」(ミネルヴァ書房)
2008年に起こったサブプライム問題に端を発する世界的な経済危機の原因として、新自由主義や自由市場経済が批判されることが多く、非常に違和感を感じていた。そして資本主義経済そのものに問題があり、社会主義や共産主義への移行を求めるような論調が見られるようになり、何とかこれらを批判できないかと考えていた。
その結果として見つけた書物の一冊がこの「競争と独占―産業組織論批判」である。1985年に出版された本であり、書店では見付らず、Amazonで古書を入手した。
著者の越後和典先生は、日本において近代経済学の一分野である産業組織論の権威であった。しかし、先生は産業組織論そのものの欠陥を見出したため、何と自らの権威の源である産業組織論そのものを批判し始めたのだ。学問に携わる者としては当然の姿勢だが、世の中の多くの学者は自らの学説に固執し、地位を守る為に絶対に自説を批判したりはしないだろう。越後先生は学者としての良心からそれを実践したのだろう。尊敬に値する。
なお論をさらに進めた(と思われる)著書として、「新オーストリア学派の思想と理論」(ミネルヴァ書房)がある。2003年に出版された本だが、未読である。未読の理由は価格が高いというだけの理由だ(情けない)。Amazonのページの紹介文には「世紀の日本経済の最大の課題が、干渉政策を排し市場経済を純化することにある、とする著者の持論を展開する」とある。小泉元総理が規制緩和を行ったというが、実は殆ど緩和されておらず、アメリカの言いなりに制度を変えて経済を混乱させただけだったからなあ。
ついでに言うと、先日読んだ、森村進「自由はどこまで可能か―リバタリアニズム入門」(講談社現代新書)もこの関連であった
さて、越後先生の論文が滋賀大学経済経営研究所のページで読むことが出来る(PDFをダウンロードする)。次の3つは必読だ。
・彦根論叢 第362号 (2006年9月30日)
ハンス=ヘルマン・ホッペの業績―金本位制と自由銀行業の擁護―
・彦根論叢 第373号(2008年6月30日)
カールポランニー批判―自由な市場経済の弁護(1)
・彦根論叢 第362号 (2006年9月30日)
干渉主義批判―自由な市場経済の弁護(2)―
最後の論文の補遺には次のようにある。抜粋させて貰う。
↓ここから
本論文脱稿後の9月中旬、ウォール街を襲った金融危機は、公的資金による救済措置にもかかわらず沈静化せず、全世界に波及し、深刻な打撃を加えつつある。この事態を生んだ根本的な原因は、ドルという不換紙幣が国際準備通貨としての特権を背景に増刷され続けてきたことにある。これは金との結びつきを断った通貨金融制度自体の宿命であり、いかなる政府も貨幣数量や物価水準を適切に維持・管理する能力を有しないとする拙論の正当性を証明するものである。
↑ここまで
越後先生の慧眼には誠に恐れ入る次第である。
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